第9回東京激術劇場社共生セミナー「ようこそ!ザツゼンとしたまじわりの表現世界~障害福祉と舞台芸術が根っこからながる話」終了しました。

 昨夜こちらのセミナーが無事に終了しました。アサダワタルさんからの「集合!」のもと、カプカプ所長で演劇ライターの鈴木励滋さん、体奏家・新井英夫さん、彼のALS確定診断後に有機的に変容するカプカプ新井一座から板坂記代子さん、そしてササマユウコが参加しました。昨年からはコミュニティ・アーティストの小日山拓也さんも一座に参加し(動画出演)、何よりもカプカプの鈴木まほさん、千葉薫さんをはじめ、実は関わる「みんな」が一座なのだとあらためて感じるひと時でもありました。

 今回は、気心知れた仲間が内と外の「境界」であるオンライン上に集い、自分たちがやってきたことを俯瞰する時間でもありました。舞台芸術と福祉が出会う場は、太古の洞窟から続く人間の営みと地続きにあって、同時に「今」の延長線上にある「未来」の芸術や福祉のかたちでもあるだろうと。だからカプカプの日常と非日常を切り分ける「舞台芸術」ではなく、日常を少しずらした異日常のワークショップが求められている。それは「よく生きるとは何か」という根源的な問いにつながっていくし、励滋さんはそのカプカプの試みを「カクメイ」と呼びましたが、大袈裟ではなく本当にその覚悟をもって臨んでいるからこそ、それが今まさに病と向き合う新井さんへのエールともなっている。

 もし時間制限が無かったら、あのまま朝まで語り明かせそうな(笑)密度の濃い時間でした。「何か面白いこと」が生まれる場や人の関係性が、少しでも次世代に伝わっていたらいいなあと思います(実は出演者間もひと回り以上の世代差があるし、まったく違う時代や国を生きてきたとも言えるので)。

 後日、文字情報アーカイブも公開されると思いますので、どうぞ引き続きご注目ください。ご視聴ありがとうございました。

 

【音楽・サウンドスケープ・社会福祉から】

 個人的に、この社会共生セミナーは2021年の第2回「もし世界中の人がろう者だったら どんな形のオンガクが生まれていた?」(牧原依里、雫境、ササマ)以来の登壇となりました。視覚障害者でもあったカナダの作曲家R.M.シェーファーが発見した知覚の境界に生まれる「サウンドスケープ」という世界。この「世界の捉え方」は音のある・ないに関わらず「場をきく力」になることを東日本大震災以来の活動のなかで実感しています。

 シェーファーは、視覚を補うために聴覚を鍛えることで自らの世界を調律したはずです。しかし、特に幼い頃から聴覚訓練を受けてきた音楽家は、むしろ「聴覚以外」の知覚を「ひらく」意識の方が必要だと感じています。音に厳しすぎると見えなくなってしまう世界がある。「耳だけ」の音楽はむしろ不自然ではないか。「きく」の多様性、場によって知覚の「ひらき方」を変える経験を積むこと。「音楽・サウンドスケープ・社会福祉」を提示したシェーファーの真意は、むしろそこにあると感じています。

またそんなお話もどこかで出来たらと。

【東京芸術劇場専用サイト】
https://www.geigeki.jp/performance/event314/e314-2/


執筆:ササマユウコ(音楽家・芸術教育デザイン室CONNECT代表)

1964年東京生まれ。都立国立高校、上智大学文学部卒。セゾン文化映画事業、音楽雑誌編集部、公共劇場スタッフ、作曲・演奏活動を経て、2011年東日本大震災を機に「音楽・サウンドスケープ・社会福祉」の実践研究。ろう者のオンガク、サウンドスケープ×福祉、音楽ホールのアクセシビリティなど。
アートミーツケア学会理事、日本音楽即興学会、日本音楽教育学会。