地域コミュニティとサウンドスケープ

8か月ぶりにリアルで音が出せた団地のピロティ。オンラインではここに4台のスピーカーが設置されサラウンドの音響でした。
8か月ぶりにリアルで音が出せた団地のピロティ。オンラインではここに4台のスピーカーが設置されサラウンドの音響でした。
初代「芝の家」があった場所は今原っぱに。周囲はオフィスビルが立ち並ぶ、まるで昭和時代の保護区のような場所。
初代「芝の家」があった場所は今原っぱに。周囲はオフィスビルが立ち並ぶ、まるで昭和時代の保護区のような場所。

 先週はふたつの地域コミュニティに「音/サウンドスケープ」で参加しました。

ひとつは9月のオンライン祭以来、リアル参加は8か月ぶりとなった横浜旭区光が丘団地にある福祉作業所カプカプ(新井英夫&板坂記代子身体ワークショップ)、そして港区×慶応義塾大学が運営する地域コミュニティ「芝の家」の地域祭りです。
 カプカプでは8か月間のオンラインWSで見慣れた団地のピロティで、芝の家は原っぱを拠点にしたいずれも野外活動でした。団地のピロティはオンライン中は4台のスピーカーを設置したサラウンド音響でしたが、この日は私(音)が動きまわりました。芝の家はここを拠点に活動する「音あそび実験室」(2019年度の空耳図書館、カプカプ祭りでも応援いただいたコヒロコタロウ運営)のチンドン隊応援でした。彼らが別途に関わる千住音まちプロジェクトからも応援がきて、祭りにふさわしいハレの日の音風景を添えることができました。いずれも野外、音源が動くことで風景をつくっていきました。
 特に路地の「練り歩き」は、古い商店街からオフィスビル街へと周囲の環境によって音の風景が変わっていく様子が街の奥行きとなって大変興味深かったですし、音に誘われて大豆を入れた即席ペットボトルシェーカーを手に、小さなお子さん家族が飛び入り参加してくれたのもうれしかったです。コミュニティを包み込むように、愉快な音の風景が生まれていきました。
 特にコロナ禍の今年は、リアルで音を出せること自体が貴重な場となりました。同時に野外活動の可能性は広がったとも思います。だからこそソーシャルディスタンスをとりつつ、全体を包み込むようなサウンドスケープの音づくりがコミュニティを「つなぐ」。それはすでに40年以上も前にカナダの作曲家M.シェーファーが自らの実践を通して実証しています。いわゆる楽曲を練習して合わせるのとは違う「音のコミュニケーション」は、身体的な距離感が求められる今こそ必要な非言語コミュニケーションとも言えます。音楽はなぜ生まれたのか、音楽とは何か。あらためて原点に立ち返るような時間でした。

本日のカプカプセット。秋の森や海をイメージして。
本日のカプカプセット。秋の森や海をイメージして。

 民族楽器や手作りは誰でも簡単に音が出せて、長時間の特別な訓練を必要としない楽器も多いです(演奏家として関わる場合は別ですが)。自然や日用品をモチーフに作られた素材や音質の楽器は平均律という枠組みを超えて、みんなで同時に音を出してもカオスになりにくい。それは音量や音質が聴覚の限界(身体性)を超えないこともありますし、これが自然の「調和」とも言えます。カプカプのメンバーも抜群のアイデアで音を奏でてくれます。子どもたちはモノ(楽器)の扱い方、つまりは外界との関わり方も掴んでいきます。

 音楽家があらかじめ楽器セットを用意する時には「サウンドスケープ・デザイン」の思考が必要です。すべての楽器が同時に鳴った時にどんな「音の風景(サウンドスケープ)」が生まれるか、それを想像する力や感覚を育むためには「サウンド・エデュケーション」がおすすめです。


筆者:ササマユウコ(音楽家・サウンドスケープ研究)

2000年代に洋の東西をつなぐCD6作品を発表。2011年の東日本大震災を機にサウンドスケープ研究、2014年芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト設立。音×言葉をテーマに「空耳図書館」「即興カフェ」主宰、執筆等。