かんじる学校特別編「星空えほん会」@相模原市立博物館~プラネタリウムの可能性とともに

 1月28日に相模原市立博物館・プラネタリウムで開催された『かんじる学校 特別編「星空えほん会」』にお邪魔しました(主催:公益財団法人相模原市民文化財団/相模原市立博物館(相模原市教育委員会))。

 出演は劇団「ク・ナウカ」やSPAC(静岡芸術センター)の仕事でも知られる舞台音楽家・棚川寛子さん、平田オリザ氏が主宰する劇団青年団の看板俳優・松田弘子さん、SPACの若手俳優・加藤幸夫さん、森山冬子さんという豪華メンバー。舞台上には棚川さんらしい素朴な音の楽器が並べられ、絵本の内容にちなんだ楽しい歌や松田さんオリジナルのダンスも披露され、開演前から会場の子どもたちを巻き込みながら、心温まる「絵本の朗読会」が繰り広げられました。

 この日選ばれた二冊の絵本は『よるです』(作・絵:ザ・キャビンカンパニー 偕成社)と、『よるのかえりみち』(作・絵:みやこしあきこ 偕成社)。途中に『ほしめぐりのうた』(作詞・作曲:宮沢賢治)をはさみながら、それぞれの絵本の世界を「目」と「耳」の両方で楽しむような演出でした。会場のプラネタリウムは客席が階段状で劇場のようでしたし、朗読会の枠を自由に飛び越えた「絵本を使った小さな舞台作品」だったと思います。ほどよく肩の力が抜けた自然体のステージは、日ごろ第一線の舞台で活躍する舞台人の「アート」だったことは言うまでもありません。
 同時に会場内には十分なスタッフが配置され、暗がりでも安心して過ごせるような声かけや気配りがあり、低学年の子どもだけでもリラックスして過ごせる雰囲気に包まれていました。終演後にはステージ上の楽器に子どもたちの輪がうまれ、楽器体験や出演者との交流も楽しんでいました。
 子どものみ定員100名で土曜日午前のプログラムが満席だったことは、正直驚きでもありました。相模原には日ごろからJAXAを通して宇宙やプラネタリウムに親しむ下地はあるのかもしれませんが、今回はそこから舞台芸術の世界にも視野がひろがる機会になったとしたら、そこには新しい芸術体験や学びの可能性を感じます。

照明を落とした本番中の記録写真は撮影不可。こちらは開演前の様子。@相模原市立博物館プラネタリウム
照明を落とした本番中の記録写真は撮影不可。こちらは開演前の様子。@相模原市立博物館プラネタリウム

 意外と知られていませんが、プラネタリウムは「教育施設」として各自治体に設置されている場合も多く、各地でさまざまなプログラムが試みられています。星空が見えない都内23区には、かつてすべての区にプラネタリウムがあったとききますし、自治体の教育施設のみならず、民間の娯楽系施設のプログラムにもまた別の魅力があります。
 もちろん設備の新旧や運営方法の違いはありますが、たとえ最新設備ではなくても工夫が凝らされた良質なプログラムは多々あります。施設よりずっと簡素なドーム型の移動式プラネタリウムでも、アットホームで特別な星空時間が体験できます。

 今回のプラネタリウムは教育施設でしたから、朗読ステージの前に専門ガイドによる星空解説の時間が設けられました。ただし授業のようなガイドではなく、客席の子どもたちとの楽しいやりとりを通して、自分たちの暮らす街の夜空へ、大きな宇宙へと想像力を広げ、冬の星座に自然と興味が持てるような内容になっていました。日常から非日常へ。それこそが芸術体験だと、その後に続くアーティストのステージとともに、子どもたちも無意識のうちに感じることができたのではないでしょうか。
 有名なギリシャの星座をはじめ、人類は古代から星空に思いを馳せてきました。西洋音楽の出発点とも言える「天体の音楽(ムジカ・ムンダーナ)」、「天から差す光」に例えられる雅楽の笙、インドや中国など世界に無数に存在するであろう星物語など、芸術と宇宙、人間と宇宙は切っても切り離せない存在でした。本来は音楽と科学は同じ領域にある学問でしたし、いまこうして生活している時間も、太陽や月や星、宇宙の動きとつながっています。それがいつの間にか科学と芸術が切り離されてしまう。それは学校の教育現場でも同様です。だからこそプラネタリウムには「芸術と科学」を再びつなげる役割をはじめ、多様な可能性が内在していると感じます。気づくと平面的になりがちな日常の「視点や時間」をダイナミックに変えられる場は、子どものみならず、大人にも必要とされるかもしれません。お近くのプラネタリウムにもぜひ注目してみてください。今回のように、劇場とはひと味違う素敵な芸術に出会える可能性もありますよ。
 もちろん本物の星空もお忘れなく。(ササマユウコ記)

●相模原市民文化財団 さがみはらキッズプログラムサイト 「にんにん島」→

◎2017年のコネクトでは、特に劇場や美術館の外側にある小さな芸術、柔らかな存在感を放つアーティストの仕事に注目していきたいと思います。