市民群読音楽劇『銀河鉄道の夜』付帯企画ワークショップ@桜美林大学プルヌスホール

今年で9年目を迎える桜美林大学プルヌスホール市民群読音楽的『銀河鉄道の夜』。その付帯企画ワークショップとして4日に脚本・演出の能祖將夫氏(桜美林大学教授)による群読ワークショップが開催されました。

年齢や性別もさまざまな23名が大きな輪になって、宮沢賢治のコトバをひとり1行づつ順番に読んだり全員で声を合わせたりする「群読」体験の3時間でした。銀河スタイルの「輪になる群読」の興味深いところは、初対面/未経験の参加者で構成されたグループでも最後にはひとつの「群読作品」と言えるほどの状態に仕上がるところです。ここで使われたテキストがオノマトペを効果的に使って音楽的に(楽譜のように)構成されているため、賢治のコトバが身体リズムに無理なく入ってくる。能祖氏は輪の中心点で指揮者や作曲家のように参加者に指示を出します。自分の番が回ってきた参加者は、対面する相手に声を届かせるというよりも、輪の内側全体に響くように大きな声を出している。このスタイルは舞台から客席に(一方向に)声を出す緊張感とは違う、独特の「安心感」や「一体感」が生まれます。参加者からは「もっとやりたかった!」という声も多く聞かれました。「個」の集合体である「輪」には「点」を「線」に変えるチカラや、「個」の失敗を吸収する効果もあります。「ズレ」はエコーのように音風景に奥行きを生む。中心点(能祖氏)に声が集まることで音風景の中に芯が生まれる。輪の内側から立ち上がる個の声(オト)の集合体は輪の外側にも威圧感なくつながっていきます。

「輪」は古くから民族的な儀式やコミュニティづくりにも取り入れられていますし、最近はコネクトのネットワークでもご紹介している「つむぎね」のように、音楽(旋律)を個の「オト」として捉え直し、円形にして紡ぎ直すような作曲手法を選ぶ若い音楽家も増えています。古くから使われる手法ですが、若い世代も新しさと懐かしさを織り交ぜながら現代の「民族音楽」を目指す。個が無理なく参加でき、輪が生む音風景は個をはるかに超え、透明度が高く普遍性を生む。要はプロがおさえているとは言え、市民劇『銀河鉄道の夜』も芸術性や完成度が非常に高いわりに稽古日数が1週間~10日程度と驚くほど短い理由もここにあると思います。

そして輪の内側に立ち上がっていく賢治のコトバたち。その透明なオト(声)の風景はひとつの宇宙であり、賢治のオノマトペ(オト)やコトバ(旋律)やリズムは、耳できくとあらためて音楽なのだと気づくのでした。(ササマユウコ記)